psyandcoの備忘録

うつの当事者。休職、退職を経て就労移行支援利用中。セルフモニタリングとWebマーケティングの勉強のため日々の雑感を記録したいと思います。

【オピニオン】就労移行支援事業の限界。障害者雇用の内側からの提言【就労移行支援】

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 この記事では就労移行支援が抱える課題と、

普段、感じている疑問を元に提言を書きます。

 

前回に引き続き障がい者雇用の観点から、

就労移行支援の提言をしたいと思います。

 

出戻り障がい者の憂うつ

就労移行支援を経て就労することができても、挫折してで戻ってくる人が居ます。

なぜこのような悲劇が起きるのでしょうか。

 

その人の話を聴くと、職場で放置されてやることが無いとのこと。

いまだそのショックを引きずってしまい、勇気を持てずうつうつと復帰できていない状況なのです。

 

これは本当によくわかります。

私が勤めていた会社も当時そのような状況でした。

仕事を与えないのは、一般就労では一種のパワハラです。

 

しかし障がい者雇用ではこのような状況がうまれやすいリスクがあります。

雇用するという義務を果たせば、そこで終わりだからです。

 

www.sbbit.jp

障がい者手帳を取得させる

これには就労移行支援の問題もあるでしょう。

事業者は後述の通り、利用者を就労させる動機が生じにくい構造です。

 

できるだけ長くゆっくりしてもらって、最後は障がい者手帳という錦の御旗で、

企業に押し込むことができればいいのですから。

 

そのため、利用者に障がい者手帳を取得させるのです。私も何度も言われました。

 

一方で利用者の教育投資には及び腰になります。

1日あたりの金額×通所日数=売上なので、教育にコストをかけると利益が減るわけです。

それでは、なぜ就労移行支援事業所はこのような行動に出るのでしょうか。

 

就労移行支援の制度的な限界

就労移行支援の事業者はどのように経営しているのでしょうか。

就労移行支援事業所の収益源は、

  • 毎月の利用者に応じた国庫負担金
  • 本人負担利用料(まず無い)
  • 障がい者求人の掲載料
  • 障がい者の就職あっせん手数料

などが考えられます。

 

それでは事業所の経営者は、どのように行動するのが合理的でしょうか?

 

ながくいてもらいたい

たとえば2年間の利用期限があるとすると、できるだけ長くいてもらうことが収益最大化になります。その間売り上げが毎月立つわけですから。

 

これは利用者の置かれている状況次第では、デメリットになりえます。

 

事業所経由で就職をしてもらう

これは手数料が発生するためです。

一般の転職エージェントと同じ収益です。

当然、事業者は利用者に対して独自の就職活動を制限するでしょう。

ですがこれは明確な人権侵害にあたると考えます。

日本国憲法第22条第1項において「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択 の自由を有する。」 と規定されています。

 

いわゆる「職業選択の自由」です。

ですからあからさまに制限することはないでしょう。

私の場合は事前に報告、相談するようにという話をされました。

 

就労移行支援のプラットフォーム事業とは

二つの可能性が考えられます。

まずは企業からの求人広告の掲載手数料です。

 

ですが、通常の求人と違い民間の事業者に広告を依頼することはおそらくペイしないでしょう。

 

有料の求人広告は、そのエージェントが抱える人材が、相対的に付加価値を出せる場合にのみ効果があります。

 

障がい者雇用は、人材の能力ではなく手帳の有無というのが評価軸だからです。

もちろん持っていても落ちる人はいます。

 

そもそもほとんど無料のハローワークという強い競合が存在しますし。

これは通常の転職エージェントに比べて低収益になる原因の一つでしょう。

 

日本の障がい者にあまねく機会を提供する

プラットフォーム事業のもう一つの可能性は、

小規模の就労移行支援事業者をつなぎ合わせることで、エコシステムを構築することと言えます。

 

やはり地方の障がい者はチャンスが少ないです。

私の通所する事業所にも、就労をめざして地方から出てきている人もいます。

当事者にとっては負担を感じることが多いかもしれません。

 

大手の事業者が出店しないような地域にも、障がい者の就労移行支援は必要なはずです。

そこで地場の支援者にフランチャイズシステムを提供する。あるいわ、事業所の広告をプラットフォーマに掲載する。

 

このような事業を通じて利用者、事業者、プラットフォーマが、それぞれレベニューシェアを図るというものです。

これはまだまだ時間がかかるかもしれません。

 

 就労移行支援における三方よし

それでは利用者、就労移行支援事業者、企業の三者にとって、

三方よしのシナリオを考えてみることにしましょう。

 

就労移行支援のマネタイズの改革

このように利用者に教育投資をする誘因が働かないのは、

  • マネタイズの手段が限られているせい。
  • 教育しても能力を発揮するチャンスがない。

からと言えます。

そこで利用者、事業者(支援者含む)、および政府のできることを検討してみましょう。

 

提言

  • 特定業務企業研修に応じる企業への障がい者雇用率優遇措置
  • 事業者の障がい者設備投資減税
  • 障がい者教育訓練給付金の創設、条件をみたした就労移行支援事業者の認定
  •  障がい者の管理職登用率の設定および開示

まとめ

  • 政府の役割も重要であるが、受け入れ側の企業が当事者意識をもつことで変わることもある。企業もどうせ雇うならイノベーションを起こす気概を。
  • 就労移行支援事業者は出口戦略を持つこと。そして企業に対して障がい者活用のためのコンサルをする。そのためにリーダー企業が先陣をきって自社で実験をする。
  • 障がい者当事者は、自身の困難に応じてチャレンジをする。甘えない、あきらめない。その姿勢が周りを動かす力になる可能性を秘めていると信じて。